皆さんのポケットやかばんに入っている財布を思い浮かべてみてください。何枚お札が入っていたかな、と持ち合わせを気にすることはあっても、ニセ札が混じっているのではないかと心配する人はいないでしょう。
日本で最初にお札が登場したのは今から約400年前、江戸時代の初めにさかのぼります。一地方の商人が発行したものでした。初めて見るお札、受け取った人はどんな思いだったのでしょうか? 結果としてこのお札は、江戸時代を通じて流通することになります。つまり、商人の資金力をよりどころとして、市場の「信頼」を勝ち得たのです。そして、実用の上でこの「信頼」を担保するのが偽造防止対策ということになります。
明治以来、一貫してお札を製造してきた独立行政法人国立印刷局は、偽造防止技術とともに歩んできました。それはお札のほか、切手や諸証券にも用いられています。博物館では、そうしたお札や切手の歴史や技術の変遷を紹介しています。そして一人でも多くの方々に、普段何気なく使っているお札や切手の社会的・文化的意義について、改めて考えるきっかけとしていただければ幸いです。そのためにも、製造元ならではの特徴ある展示に心がけ、楽しく学べる博物館でありたい、と考えています。
当館は入館無料です。財布の中身を思い出して心細く感じている方も、気軽にお出かけください。ご来館お待ちしております。
お札と切手の博物館 館長