見どころ解説

特別展示の見どころについて紹介しています。

この特別展示は終了しました。

平成26年度第1回特別展
お札のかたち、お札のもよう~様式の世界史~

近代より前のお札の様式

本展の前半では、近代より前の中国、日本、ヨーロッパ、アメリカのお札を展示します。

大型のお札―中国独自の様式

大明通行宝鈔

大明通行宝鈔 1貫(かん)
1375年 明代 340×220 mm

中国では世界に先駆けて10世紀末(北宋代)にお札が登場しましたが、初期のお札は現存するものが少なく、銅の版面のみが発掘されているものもあります。本展では、今から640年前の明代のお札(大明通行宝鈔(だいみんつうこうほうしょう))と、その500年近く後の清代のお札(戸部官票(こぶかんぴょう)、大清宝鈔(だいしんほうしょう))を展示します。大明通行宝鈔は、世界最大のお札です。また、明代のお札のモデルになった元代のお札(1287年発行)も、大きさや図柄を見ていただくため、印刷原版の拓本(複製)を合わせて展示します。元代には、コインの使用が禁止され、お札が唯一のお金として使われていました。

自由研究のヒント:中国で発達したお札の大きさ、古い紙の質感、独特の図柄などを見てみよう。展示しているすべてのお札の枠模様の中に、中国皇帝を象徴する竜の絵が描いてあるのを見つけてみよう。

短冊(たんざく)型のお札―日本独自の様式

芝村藩札

大和(現在の奈良県)芝村藩札 銀1匁(もんめ)
延享2(1745)年 171×38 mm

江戸時代に使われていた短冊型のお札を展示します。全国に250ほどあった藩(はん)のほとんどが、江戸時代をとおしてそれぞれ違うお札を発行しました。一つの国の中で同時期にこれほどたくさんの種類のお札が発行されたのは、世界的にも珍しいことです。展示できるのは、そのほんの一部ですが、短冊型にも色々な大きさや形があったり、木版印刷だけでなく、墨書きのお札もあったりするのが分ります。偽造防止技術として、紙に様々な色がつけてあるのにも着目してみてください。また、江戸時代のお札には、七福神(しちふくじん)、松と竹、鶴(つる)と亀(かめ)などのめでたい絵柄がしばしば描かれています。

自由研究のヒント:展示している12点のお札のうち9点に七福神が描かれています。大黒天(だいこくてん)、恵比須(えびす)、寿老人(じゅろうじん)、弁才天(べんざいてん)などを見つけてみよう。また、ひげを生やした人の顔をしていて、牛の体と角をもち、額と体にも目がある「白沢(はくたく)」という中国の想像上の動物も見つけてみよう。

手紙型のお札―西洋の様式① 手形から発達

ポーランド 公庫券

ポーランド 公庫券 25ズウォティ
1794年 179×96 mm

手形からお札が発達した様子をご覧いただくため、イギリスの手形、小切手、お札を展示ます。また、地域によって異なる形や模様をご覧いただくため、ポーランドとスウェーデンのお札も展示ます。ポーランドとスウェーデンのお札は、イギリスのように銀行が発行したものではなく、政府が発行したものです(右図の「公庫券」は、国庫を後ろだてにして発行したお札のことです)。手形とは金貨・銀貨の支払いの約束を書いたもので、これらの政府発行のお札にも金貨・銀貨の支払いの約束が書いてあり、文章を中心にした手紙型になってます。初期のお札は、なぜお札に価値があるのか、文章で説明しなければならなかったのです。

自由研究のヒント:展示しているイギリスの手形、小切手、お札が6点ありますが、そこに英語で書かれた文章の中に、金額が書かれている箇所を見つけてみよう。イギリスのお金の単位は、Pound(ポンド)といいます。

名刺(めいし)型のお札―西洋の様式② 法律で発行

アッシニァ紙幣

フランス アッシニァ紙幣 10リーブル
1791年 72×114 mm

政府が法律で発行した名刺型のお札として、アメリカ独立戦争(1775年~1783年)のときに独立を目指した政府が発行した「大陸紙幣(たいりくしへい)」と、フランス革命(1789年~1799年)のときに革命政府が発行した「アッシニァ紙幣」を展示します。政府が法律で発行したお札がすべて名刺型というわけではありませんが、戦争などで緊急のお金が必要になったときに発行したお札には、ときとして名刺型のような変わったものがあります。大陸紙幣とアッシニァ紙幣は、どちらもユニークなデザイン様式のお札です。小さくても一目でわかる絵柄が重要になっており、お札を発行する政府の信念などを象徴する絵柄が描かれています。

自由研究のヒント:大陸紙幣には、独立戦争に関する言葉と絵柄がセットで描かれています。次の絵柄を見つけてみよう。ヤリに向かって突進するイノシシ(「死か名誉ある生か」)、海辺の嵐(「いずれ穏やかになる」)、一本の木(「3年間、嵐にたえた」)。他方、アッシニァ紙幣には、革命の理想である「自由」を象徴する女性像などが描かれています。女性像が持った杖(つえ)の先に、「自由」を象徴する三角形の帽子「フリジア帽」が載っているのを見つけてみよう。

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近代・現代のお札の様式

前半に展示しているような初期のお札に大きな変化をもたらしたのは、産業革命という歴史的な出来事でした。これによって、近代的なお札の様式がアメリカとヨーロッパに登場し、世界共通の様式として世界中に広まったのです。後半では、こうした近代・現代のお札を展示します。

近代のお札―アメリカ系

ルイジアナ市民銀行券

アメリカ ルイジアナ市民銀行券 10ドル
1860年 80×186 mm

アメリカで発行されたお札の他、カナダ、中国、ブラジル、フィリピン、メキシコなどで発行されたアメリカ系のデザイン様式のお札を展示します。近代的なお札の様式が最初に登場したのは、19世紀初頭のアメリカでした。凹版(おうはん)印刷による細かい画線で、手彫りによる肖像(しょうぞう)などの絵柄と、機械彫刻による幾何学的な「彩紋(さいもん)」を組み合わせます。こうした様式は、すぐにヨーロッパにも伝わりますが、アメリカ独自の特徴は、単色の凹版印刷のみの厳格なデザインになっていることです。アメリカの影響を受けたアメリカ国外のお札には、カラフルな印刷も使われていますが、やはり重厚な凹版印刷の枠模様や彩紋が特徴になっています。

自由研究のヒント:凹版印刷による黒など単色の絵柄(肖像や枠模様の部分)を確認してみよう。次に、細かく複雑な幾何学模様である「彩紋」を見つけてみよう。機械を使って描く彩紋は、まねて描くことが難しく、近代のお札に特有の偽造防止技術です。展示されている12点のお札のすべてに凹版印刷の彩紋があります。

近代のお札―ヨーロッパ系

ハンガリー 100ペンゲー"

ハンガリー 100ペンゲー
1930年 91×177 mm

ヨーロッパ系のデザイン様式のお札として、10か国(12点)のお札を展示します。ヨーロッパの中でも、ロシア、ハンガリー、ドイツ、フランスなどの国々は、それぞれ特徴的な様式を発達させましたが、共通しているのは、アメリカのお札にはないカラフルな地紋(じもん)印刷が使われていることです。細かい画線による絵柄を単色で印刷する凹版印刷だけでなく、カラフルな地紋印刷も近代のお札に特有の偽造防止技術です。地紋印刷にはさまざまな技法があり、カラフルかつ複雑で精巧な、美しい地紋印刷が見どころです。また、重厚なアメリカ系のデザインとは違う、開放的で軽快なデザインにも着目してください。

自由研究のヒント:地紋印刷には、偽造を防止するために、さまざまな工夫をこらした印刷技法が使われています。その一つは、一枚の版面で印刷していながら、模様の色が徐々に変る「レインボー印刷」という技法です。オーストリア=ハンガリー帝国、ハンガリー、西ドイツのお札にこの技法が使われているを確認してみよう。

現代のお札―キラキラ・デザイン

カザフスタン 5000テンゲ

カザフスタン 5000テンゲ
2008年 144×76 mm

ホログラムや特殊インキなど、近年のお札に特徴的なキラキラするタイプの偽造防止技術を使ったお札を展示します。ホログラムは、現在の日本のお札やユーロ券にも使われています。これらはカラーコピー機などによる偽造に対抗するための技術で、同様の効果がある技術として、傾けると絵柄が見える潜像(せんぞう)模様や、傾けるとプラスチックのレンズを通して図柄が動くものなどもあります。こうした技術は、お札を傾けて動かさないと、キラキラしたり、図柄が動いたりするのが確認しづらいですが、展示ケース内のお札を見るときに、首を左右や上下に動かしてみてください。

自由研究のヒント:日本の1万円札や5千円札のホログラムは小さなシールのような形をしていますが、外国のお札には縦に長い帯状のホログラムがしばしば使われています。展示してあるお札の中から、帯状のホログラムを見つけてみよう。また、カザフスタンのお札にはキラキラする緑色のインキでワシの絵柄が印刷されていたり、アメリカの新しい100ドル札には「100」という字が動いて見える細い帯があるのを確認してみよう。

現代のお札―ユニークなデザイン

震災切手と震災で焼け固まった切手

レバノン 2万ポンド
2012年 72×130 mm

近年のユニークなデザインのお札を展示します。近年は、自国の文化をアピールするため、多様なものがお札に描かれるようになっています。また、全体のデザインも、むかしは重々しいものが多かったのですが、軽やかで楽しげなものが多くなっています。先進的なデザインとしては、特にスイスやオランダに注目してください。オランダは1990年に、お札に欠かせない機能を優先し、肖像などの具体的な絵柄のない、額面金額を中心に大きく表示したデザインのお札を発行しました。2012年発行のレバノンのお札も、具体的な絵柄がなく、中央にアラビア文字で大きく額面金額の「20000」が書かれており、オランダのお札にコンセプトがよく似ています。

自由研究のヒント:国民にイスラム教徒が多いイエメン、ウズベキスタン、レバノンのお札のデザインには、イスラム文化特有の飾り模様が使われているのを確認してみよう。また、時代順に3種類(1968年、1982年、1990年)展示したオランダのお札のデザインが、どんなふうに進化しているか見比べてみよう。

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