見どころ解説

特別展示の見どころについて紹介しています。

平成27年度 春の特集展
【お札に見られる工芸官の技術】 凹版彫刻作品展

凹版について

 お札や諸証券の図柄を作製し、原版を彫刻しているのは、「工芸官」という印刷局の専門職員です。お札の肖像部分や枠などの主な模様は、ビュランという特殊な彫刻刀で銅板に画線を刻み込んだものです。これを凹版彫刻といい、凹版印刷という特殊な方式を用いて印刷しています。


凹版彫刻と偽造防止

凹版彫刻

 お札の図柄を拡大してみると、形状や陰影に点や線を組み合わせた線画方式が確認できます。お札は極めて細密な彫刻画線によって描かれており、容易に模倣できない技術であるため、偽造防止に有効です。特に肖像の凹版画線が少しでも変わると表情が変わり、違和感を覚えるため、偽札との識別に役立っています。

お札の印刷方式 凹版印刷

凹版印刷

 凹版印刷とは、版面の細くくぼんだ画線部分にインキを詰め、強い圧力をかけて紙に転写する印刷方式です。紙に写し取られたインキの画線は盛り上がっており、触るとザラザラした手触り感があります。お札の場合、インキの盛り上がりは、30~100ミクロンです。額面などには、インキをより高く盛り上げる「深凹版印刷(ふかおうはんいんさつ)」という方法が用いられています。

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凹版彫刻作品

 お札の図柄が変わる「改刷」は数十年に一度の作業ですが、工芸官は日々、技術の研鑽(けんさん)に努めています。現在、工芸官は、証券類の原版のほか、技術練磨のための習作や、国立印刷局の技術力を紹介するための凹版美術作品などを製作しています。工芸官の凹版彫刻作品の一部をご紹介します。


凹版美術作品 『べルジュレ夫人』

べルジュレ夫人


 「ベルジュレ夫人」はフランス18世紀ロココ美術の代表的な画家、フランソワ・ブーシェの肖像画です。華麗なドレスを身につけた立ち姿、シルクの艶やかな光沢感、調和した色彩描写は見る人を魅了します。 凹版彫刻は、工芸官、日詰満博が担当し、特に顔の表情、髪、腕などを細部まで再現しています。また背景と人物を調和させるため、画線の配置を工夫して繊細なタッチで彫刻しています。

グリーティングカード 『キヨッソーネ肖像』

キヨッソーネ肖像"


 エドアルド・キヨッソーネ(1832~1898年)はイタリアのアレンツァーノ出身の銅版彫刻師です。大蔵省紙幣寮(現 国立印刷局)の招きで1875年に来日し、お札や切手などの原版彫刻や印刷製版技術を伝授しました。  この肖像画は、キヨッソーネ没後100年記念として、工芸官、矢島栄が作製したものです。40歳後半のキヨッソーネの仕事に情熱を傾ける精悍な表情が彫刻されており、キヨッソーネの技術を継承した、優れた凹版彫刻作品と言えます。

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