見どころ解説

この特別展示は終了しました。

特別展示の見どころについて紹介しています。

平成28年度特別展
印紙・証紙――小さなグラフィック・デザインの世界

I. はじめに

 本展が取り上げる「印紙・証紙」とは、支払い・生産許可・検査結果などを証明するために貼り付ける小さな印刷物全般のことです。こうした「小さな証明書」のデザインの違いを、「印刷技術による違い」「貼付対象による違い」「使用分野による違い」という3つの視点から紹介します。

II. 印刷技術による違い

1. 「手彫[てぼり]印紙」

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化粧紙型の生糸印紙 明治6(1873)年(部分)

 明治初期に使われた「手彫り」の技法は、いわゆるエッチング(腐食凹版)のことで、画線はやや精巧さを欠きますが、細密な印刷ができます。右の生糸印紙は、生糸税の納付の証明として生糸の束を包んだ化粧紙(包み紙)で、「大蔵省租税寮」の名前が印刷されています。

2. 「凸版印紙」

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頒暦証 明治9(1876)年

 ここでいう「凸版」とは、「エルヘート凸版印刷」という特殊な印刷技術のことです。この技術は明治9(1876)年に印刷局の工場ができ、近代的な証券印刷事業が開始されると、精巧な図柄の印刷ができる近代的な製版技術として導入されました。右の頒暦[はんれき]証は、旧暦から新暦に移行したさい、政府が暦の出版を検査した証明として貼ったものです。

3. 「凹版印紙」

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収入印紙 1万円 昭和26(1951)年

 ここで言う「凹版」とは、エングレーヴィング(直刻凹版)を指します。特殊な刃物で金属原版を彫刻し、画線は極めて細密なものになります。この技法は近代的な紙幣にも使われています。右の収入印紙は、肖像や唐草模様などが直刻され、小型の紙幣のようなデザインになっています。

4. 石版印刷・オフセット印刷

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文部省図書課印行之証 明治18(1885)年

 石版印刷は、明治時代に民間印刷会社でポスターの印刷などによく使われました。印刷局にも石版部門があり、右の「印行[いんこう]之証」(発行元の証、教科書検定印紙)は印刷局製です。

 昭和に入る頃には、石版印刷に替わる比較的簡易な印刷技術として、オフセット印刷が広まりました。

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III. 貼付対象による違い

1. 文書に貼るデザイン

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千葉県水道事業収入証紙 昭和48(1973)年

 「文書」は、印紙・証紙を貼り付ける対象として最も一般的ですが、このタイプは「切手」型のデザインがほとんどです。右の千葉県水道事業収入証紙は、水道業者が千葉県に手数料を支払った証明として、申請書に貼付して使います。

2. モノに貼るデザイン①――「封印」タイプ

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郵便物封緘紙 明治34(1901)年

 モノに貼付する印紙・証紙の使われ方として、「封印」があります。このタイプは、物品が未開封であることを証明する機能も果たします。右の郵便物封緘[ふうかんし]紙は、現金などの書留郵便に使われたもので、封印の目的に合わせて横長になっています。

3. モノに貼るデザイン②――ステッカー型、商標型

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物品税証紙(ゴルフクラブ用) 昭和38(1963)年

 貼付する対象が紙ではなかったりする場合、ステッカー型の印紙・証紙が使われることがあります。右の証紙は、ゴルフクラブのシャフトに貼り付けて使ったもので、ビニール製のシール式です。

 また、生産品の販売許可などを証明する証票類には、商標ラベルのようにデザインされたものが多くあります。

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IV. 使用分野による違い

1. 生糸のデザイン――日本における印紙・証紙の幕開け

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蚕種印紙 明治5(1872)年

 幕末の開港とともに日本最大の輸出品となった生糸産業は、日本における印紙・証紙の幕開けの舞台となりました。右の蚕種[さんしゅ]印紙は、日本初の印紙です。蚕[かいこ]が卵(蚕種)を産み付けた紙である「蚕種紙」に貼付して、販売許可の証明として使われました。

2. 煙草[たばこ]のデザイン――色分け・帯型

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日本専売公社証票 昭和35(1960)年

 明治9年から製造された煙草印紙は、煙草税の支払いを証明するため、煙草の包装に貼付して使われました。明治31年からは、煙草産業が国営専売制となり、専売局封緘紙が発行されました。右の証票は、専売公社時代の封緘紙です。

3. 酒のデザイン――大きさ・等級

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酒税証紙(輸入洋酒用) 昭和28(1953)年

 昭和28(1953)年に酒税法が制定されると、酒税証紙が発行されました。酒類の容器の開栓口を封印するように証紙を貼り付け、酒税の支払いを証明したものです。容器の大きさに合わせて、様々な大きさの証紙が発行されました。

4. 積立金のデザイン――貼って集める

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国民年金印紙の貼付された国民年金手帳のページ
昭和42(1967)年

 積立金の支払いを印紙・証紙の購入によって行い、専用の手帳に貼って集める形式のものがあります。右の国民年金印紙は、その代表的なものでした。現在は、健康保険印紙などがこの形態で続いています。

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V. 関連資料

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収入印紙の凹版原版 昭和12(1937)年

 関連資料として、印紙・証紙の広報用ポスターや、製造工程に関連する資料を展示します。右は、昭和初期の収入印紙の凹版原版で、製造機関である国立印刷局ならではの収蔵品です。

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