お札の特長
日本のお札が持つ、様々な特長についてご紹介します。
お札(日本銀行券)と国立印刷局
普段何気なく使っているお札ですが、正式には「日本銀行券」といいます。
みなさんは、お札の表面下部にある小さな文字にお気づきでしょうか。これは「製造銘版」といって、私たち国立印刷局が製造している証です。
その歴史は古く、前身である大蔵省紙幣局が、明治10(1877)年に国産第1号紙幣を製造したことに始まります。以来国立印刷局は、用紙から印刷まで一貫して日本のお札を作り続けています。
お札の製造量はどのくらい?
お札は、財務大臣の製造命令に従い、日本の中央銀行である日本銀行の発注に基づき、国立印刷局が製造しています。
国立印刷局が日本銀行に納入するお札は、現在は年間およそ30億枚です。お札の厚さは約0.1mmなので、30億枚を積み重ねると約300キロメートルとなり、富士山の高さの約80倍もの量になります。
そして、国立印刷局から日本銀行に納入されたお札は、金融機関を通じて、世の中に供給されます。
お札の寿命
日本銀行によると、お札の平均寿命は一万円券で4~5年程度、五千円券と千円券は使用頻度が高く傷みやすいこともあって、1~2年程度とされています。
お札は人の手で扱われるほか、機械に通すなど、様々な使用状況により徐々に傷んでいくため、順次新しいものを製造する必要があります。
国立印刷局では、通貨需要に確実に対応するための製造体制を整えています。
お札の特殊な用紙
日本のお札の用紙は、みつまた、アバカ(マニラ麻)などを原料としています。みつまたは、古くから和紙の原料として使われており、明治12(1879)年に初めてお札用紙の原料として採用されてから、現在まで伝統が受け継がれています。
お札は、長年にわたって人の手から手へ渡り、機械に通され、折り畳まれ、ときには水に濡れることもあります。状況によって様々に扱われるお札には、強い耐久性が求められます。
また、偽造されにくいことも重要です。お札独特の色や風合い、触ったときの独特の感触は偽造発見の第一手であり、加えて「すき入れ(白黒すかし)」の精巧さは、偽造に対する大きな抑止力となっています。
特殊な印刷方法
お札に施された数々の偽造防止技術の中でも、プリンタやスキャナを悪用した偽造に対して特に有効なのが、「凹版印刷(おうはんいんさつ)」です。
凹版印刷は、お札の肖像部分や額面の数字などの主な図柄に使われています。普通のオフセット印刷等と異なり、インキを高く盛り上げる特殊な印刷方法のため、触るとざらざらした触感があります。
また、超細密な画線で印刷されていることも特長で、これほど細かい画線を通常の印刷やカラーコピーなどで再現することは、困難を極めます。
現金取扱機器の普及
私たちを取り巻く現金の流通経路は、昔と比べて大きく変化し、現金取扱機器が普及しています。
日常生活では、銀行やコンビニのATMでの現金の預け入れや引き出し、両替機での両替、自動販売機での飲料水の購入、駅の券売機でのIC乗車券へのチャージ・切符の購入など、お札を機械に通して処理する場面が非常に多くなりました。
そのため、機械処理は今や必須となりました。お札には、こうした流通環境を考慮した機械処理適性が求められます。
通貨偽造は犯罪
偽札を作ったり、偽札と知りながらそれを使用した場合、法律で罰せられます。
また、本物のお札の額面を書き換えたり、切ったりして変造することも同じように法律で罰せられます。
(主な取締法規)
- 通貨偽造・変造罪(刑法第148条第1項)→無期又は3年以上の懲役
- 偽造通貨・変造通貨の行使罪(刑法第148条第2項)→無期又は3年以上の懲役